銀行取引なしでどう資金を回したか——東南アジアでの資金繰りのリアル

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海外で起業する際に避けて通れないのが「資金繰り」の問題です。

日本で起業するように、銀行融資が簡単に受けられると思ったら大間違い。特に外資系の中小、零細企業にとって、担保となる不動産等がなければ銀行からの融資はほぼ不可能です。では、どうやって資金を回してきたのか。

ここでは、私自身が経験してきた“銀行なし資金繰り”の実態を紹介します。


1.初期資金は出資者からの投資で準備

起業時にまず必要なのは、会社を立ち上げるための初期資金です。

弊社の場合は、銀行からの借り入れではなく、信頼できる出資者からの投資でスタートしました。

日本のように金融機関の支援が整っていない環境では、投資家や出資者の存在が非常に大きな意味を持ちます。もちろん事業自体に投資してもらうためには、それなりの魅力やメリットを示さなければなりませんが、この段階での資金確保が、その後の事業展開を大きく左右すると痛感しました。


2.運転資金は顧客からの前渡金

東南アジアの製造業では、顧客から輸出前に一部の代金を受け取る「前渡金(アドバンス)」の習慣があります。

弊社でも、この前渡金を運転資金や原料の仕入れに充てることで、資金繰りが大きく助けられました。もちろん納期遵守や品質維持が前提ですが、顧客との信頼関係を築ければ、金融機関に頼らずに資金を回すことが可能になります。

ただし、この依存度が高すぎると、値引き交渉など顧客側の事情に左右されるリスクも大きくなるため、常にバランスを意識する必要があります。


3.株主からのローンで支える日々

会社の成長期に資金が不足する場面では、株主からの融資やローンに助けられました。

銀行と違い、金利や返済期限について柔軟に対応してもらえるのは大きなメリットです。一方で、その厚意に甘えすぎたり、株主との信頼関係を損なうと経営自体が揺らぎかねないというプレッシャーも常に伴います。

資金調達における「融通が利く」という利点と、「関係性に依存する」というリスクは、表裏一体だと感じています。


4.成長期に感じた銀行融資の必要性

創業初期から成長期までは顧客や株主の支援で何とか資金を回していても、事業が本格的な拡大期に入ると「銀行からの融資が必要だ」と感じる場面が増えてきます。

新しい設備投資や人員の拡大には、どうしてもまとまった資金が欠かせません。柔軟さを重視すれば非銀行系の資金調達でやり繰りできますが、規模を拡大する段階では、やはり銀行融資という選択肢を避けて通れないのが現実です。


5.銀行なしでも回せるが、万能ではない

出資者からの投資、顧客からの前渡金、株主からのローン——これらを組み合わせれば、銀行に頼らず資金繰りを回すことは十分可能です。

ただし、それぞれにリスクや制約があり、事業が拡大期に入ると銀行の存在が不可欠だと強く実感しました。

資金繰りに「唯一の正解」はありませんが、状況に応じた柔軟な組み合わせと、やはり最終的にはここでも人との信頼関係こそが最大の武器になると考えています。


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