【海外起業】東南アジアで何をビジネスにするか。現地在住20年の経営者が語る、選んではいけない業種と勝てる分野

海外ビジネス・生活のリアル

海外、特に東南アジアで起業したいけど、何をやればいいか分からない。

その悩みは海外で起業を志すみなさんにとって、とても正直な出発点だと思います。

こんにちは、Dextaです。

私も20年以上、東南アジアで製造業を経営してきました。その間、同地で起業した知り合いや仲間たちが、業種や道を間違えて去って行く場面を何度も目にしてきました。

この記事では、「何をやるか」で悩んでいる方に向けて、現場で見てきたリアルをお伝えできればと思います。華々しい成功談より、時には撤退や失敗例の話の方が参考になる部分は多いかもしれません。


東南アジアで起業して散っていく人が選ぶ業種

以下の業種は、日本人が挑戦しやすい反面、壁にぶつかりやすい分野でもあります。

私の周囲で見てきた実例をもとに、それぞれのリアルをお伝えできればと思います。データや統計といった正確なものではなく、現場で目の当たりにした話として受け取っていただければと思います。

飲食業

日本食レストランや居酒屋を始める方は後を絶ちません。現地在住の日本人向けに需要があるのはもちろんのこと、昨今の日本食ブームによりまさに雨後の筍のごとくです。(笑)

一番の問題は、参入障壁の低さと言えるかもしれません。いわゆる「なんちゃって日本食」含め、同じような店が乱立し、価格競争に巻き込まれるパターンも多いです。

加えて、食材の仕入れコスト、家賃、人件費の管理が日本以上に難しい。「現地は人件費が安い」というイメージがありますが、飲食業で必要な人数を揃えると、意外とコストがかかります。食品衛生の基準も国によって異なり、保健所や衛生局といった現地当局との関係構築も必要になります。

特に知人のケースが印象に残っています。

日本風居酒屋を開業し、最初の1年は順調でした。ところが2年目に入ったころから、スタッフによる金銭のちょろまかしが発覚。少額のうちは見て見ぬふりをしていたのですが、積み重なるうちに経営を圧迫し始めました。

外からは見えにくい損失が、じわじわとオーナーの心を削っていき、最終的には心が折れ、3年目にはローカルに二束三文で売却して撤退しました。業種の選択以前に、こうした人の問題で失敗するケースも少なくありません。

小売業

日本クオリティの商品を現地で販売するビジネスは、一見魅力的に見えます。ただ現実は厳しくなってきています。

ECの台頭により、現地の消費者はオンラインで日本製品を手軽に購入できるようになりました。

Lazada・Shopee・Tokopediaといったプラットフォームでは、日本のメーカーが直接販売しているケースも多くなり、中間マージンで稼ぐ小売モデルは、年々立場が難しくなっています。

日本式サービス業

マッサージや美容、コンサルティングや研修など、日本クオリティを現地に持ち込むビジネスモデルは一定の需要があります。

ただし私自身がこの分野に携わってきたわけではないため、ここでは実体験ではなく一般的な観点からお伝えします。

競合が多く価格が下がりやすい分野と、専門性と信頼の構築に時間がかかる分野に大きく分かれます。いずれも「日本品質」だけでは差別化が難しくなっている点は、現地の日本人経営者から共通して聞く話です。

業種の特性と現地のニーズをよく調べた上で判断することをおすすめしますが、ここでも一番の敵は「日本クオリティ」を謳ったローカル資本によるサービスになるかもしれません。

外資規制や業種ごとの参入条件については、こちらの記事も参考にしてください。


外資が勝ちやすい分野とその理由

では、どんな業種なら生き残りやすいのか。私が見てきた中で、外資が優位に立ちやすい分野を挙げます。

製造業・加工業

私自身が選んだ道でもあります。

もっとも、最初から製造業で起業しようと決めていたわけではありません。現地の日系企業に就職し、製造現場から品質管理、経営の一端まで経験させてもらう中で、「ここなら勝負できる」という感覚が少しずつ育っていきました。10年近く現場で積み上げてきたものがあったからこそ、起業にある程度の勝算が持てたと思っています。

製造業が外資に向いている理由は、技術移転の優位性にあります。日本式で培った生産管理・品質管理・工程設計のノウハウは、現地では簡単に真似できません。現地の人件費と日本式の管理技術を組み合わせることで、競争力のある製品づくりができます。

ただし参入に時間がかかるのも事実です。各種許認可の申請、工場の立ち上げ、機械の調達、スタッフのトレーニング——最低でも1〜2年の準備期間が必要となり、準備が整わないうちに焦って製造を始めたりすると、必ず足元をすくわれます。

BtoBサービス

現地企業や外資系企業を相手にしたBtoBビジネスは、BtoCに比べて安定しやすいです。一度取引が始まれば継続的な収益が見込めますし、価格競争にも巻き込まれにくい。品質管理支援、工場の生産効率改善、輸出入の代行など、専門性があれば参入できる分野です。

日系企業向けサポートビジネス

東南アジアに進出している日系企業は多く、現地でのサポートを必要としています。通訳・翻訳、現地採用支援、行政手続きの代行、経理・税務サポートなど、ニーズは幅広いです。

ただしこの分野も、私自身が深く携わってきたわけではありませんし、既に長年に渡って現地で営業をしている老舗企業も存在します。

何れにせよ、現地ネットワークと信頼が命であることは間違いなく、ゼロからよりも、すでに現地に人脈がある方に向いているという印象です。実際に取り組む場合は、現地の専門家や先行事例をよく調べた上で判断することをおすすめします。

飲食業

話が矛盾してしまうかもしれませんが、失敗例が多い反面、また成功しやすいのも飲食業の特徴といえるかもしれません。

特に参入障壁が低く、個人でも挑戦しやすいというのはなかなかの魅力ではないかとも思います。

実際に私の知人でも、常に日本人が板前に立つ、極めて美味しい料理をリーズナブルな価格で提供する等、他とは違う個性を出している飲食業は成功している例が多いと言えます。

また現地パートナーと上手くジョイントし、例えば許認可や人材の問題を現地パートナーが主に管理し、本人は飲食店の運営に注力できる環境も成功の秘訣といえるかもしれません。


業種選びより大事な「3つの問い」

業種を選ぶ前に、自分自身に問いかけてほしいことがあります。

① 現地に長くいる覚悟があるか

どんなビジネスも、立ち上げから軌道に乗るまで最低でも3年程度はかかります。もちろん起業してすぐ軌道に乗るようなケースもあるかもしれませんが、私の知る限りそれらはかなりレアケースだと思います。少なくとも5年以上はこの地でやり続ける覚悟があるかどうか、最初に自分に問いかけることも必要かもしれません。

② 現地パートナーなしで回せるか

外資規制により、特定の業種では現地パートナーとの合弁が必要になります。パートナー選びを間違えると、異常なまでの干渉や口出しなど、後々深刻なトラブルに発展します。パートナーに依存しすぎるビジネスモデルは、リスクが高いと覚えておいた方が良いかもしれません。

③ 撤退ラインを決めているか

「これ以上損失が出たら撤退する」というラインを最初に決めておくことも重要です。撤退を「失敗」と捉えず、次へのステップと割り切れるかどうかが、長期的な生存を左右するともいえます。

現地では撤退にもコストがかかります。従業員への退職金、リース契約の解除費用、設備の処分など、想定外の出費が発生することが多いのも特徴です。外国なので夜逃げする訳にもいきません。(笑)

だからこそ早めに損切りする判断が、最終的な被害を小さくします。東南アジアで長く生き残っている経営者ほど、損切りと次のステップへの移行の判断が早いという印象があります。

起業前にやっておくべき準備については、こちらの記事もあわせてどうぞ。

業種の選び方に迷ったときは、現地の人材市場に精通したプロに相談することも、有効な選択肢の一つです。業種によって必要な人材や組織の作り方は大きく異なります。採用・組織づくりの観点から業種選定を見直したい方は、一度専門家に話を聞いてみることをおすすめします。

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私が製造業を選んだ理由と、今振り返って思うこと

先ほども少し触れましたが、製造業を選んだのは計算の結果というより、10年間の現場経験の積み重ねの末にたどり着いた選択でした。

起業当初から「製造業で行く」と決めていたわけではありません。現地の日系企業で働く中で、生産現場の動き方、品質管理の考え方、そして経営の視点を少しずつ吸収していきました。その経験があったから、「自分ならここで戦える」という感覚が生まれ、起業に踏み切ることができました。

20年経った今振り返ると、業種の選択より「誰と、どこで、何のためにやるか」の方が大事だったと感じます。製造業だから成功したというより、10年かけて積み上げた信頼とネットワークがあったから、なんとかなっているというのが正直なところです。

業種選びに正解はありません。ただ、「勝てる場所を選ぶ」という視点は持っておいて損はないと思います。


まとめ:業種は「勝てる場所」で選ぶ

東南アジアで起業するとき、業種選びは確かに重要です。ただそれ以上に、現地をよく知り、自分の強みを活かせる場所を見極めることが大切です。

散っていったビジネスの多くは、業種が悪かったというより、準備や覚悟が足りなかったケースが多かったように思います。

例えば先に挙げた知人の居酒屋のケースでは、「何が何でも成功する」という覚悟があれば、従業員の金銭横領にも心折れることなく、立ち向かえたかもしれません。

これから東南アジアで起業を考えている方には、まず現地に足を運んで、自分の目で現地の雰囲気を見て、五感で感じてほしいと思います。情報だけで判断せず、現場の空気を感じることが、最初の一歩になるはずです。

起業1年目に実際に経験した失敗については、こちらの記事で詳しく書いています。

Dexta

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