海外で起業するという選択は、もはや特別な挑戦ではなくなってきました。
SNSでは成功事例が溢れ、「自分もやればできそう」と感じる人も多いかもしれません。しかし20年この地で経営してきた立場から言うと、同じように始めても、うまくいく人とそうでない人ははっきり分かれます。
この記事では、その差を生む「考え方のズレ」を整理します。
こんにちは、Dextaです。
情報で分かった気になる。目の前の現場を見ない人は失敗する
海外起業を考える際、多くの人がまず情報を集めます。
現地の労務制度、税制、資本金、外資規制。どれも重要ですし、私自身も最初はそこから入りました。
ただ、問題は「情報で分かった気になること」です。 実際の現場は、文章や数字では見えない部分で動いています。例えば、同じ制度でも運用が違う。担当する人間によって解釈が違う。現場に入ると、そういう「教科書に載っていないズレ」が当たり前に存在します。
事前情報は確かに必要ですが、最後に判断を下すのは、目の前の生きた現場であるべきです。
日本の「当たり前」を持ち込む。異文化への適応を拒む人の末路
これは本当によくあるパターンです。
時間の感覚、責任の持ち方、仕事への向き合い方。日本では当たり前のことが、こちらでは通用しません。
例えば、給料日直後の無断欠勤。日本の感覚では「無責任だ」と切り捨てて終わりですが、現地には現地の生活習慣や理由があります。 ここで「おかしい」と否定し続けると、組織の歯車は一気に狂い始めます。
違いを否定するのではなく、まずは「前提」として受け入れること。ここができないと、海外経営の難易度は跳ね上がります。
給料日の翌日にスタッフが来ない。そんな「日本の常識」が通用しない現場で、私が直面した文化の壁と、それを仕組みで乗り越えた記録はこちらです。
管理を急いで対話を後回しにする。組織が歪む瞬間
指示を出すことと、人を動かすことは全く別物です。
家庭の事情、文化、価値観の違い。それらを知らないまま、日本流の管理手法を押し付けても、表面上は整ったように見えるだけで、実態は砂上の楼閣のように不安定なままです。
信頼関係は、効率よりも先に積み上げるもの。内側が伴わない組織は、肝心な時に必ず崩れます。
実際、現場でのズレの多くは「情報不足」ではなく、「解釈のズレ」から生まれます。
そしてその多くは、言葉を通してしか埋まりません。
現場との「対話」や「解釈のズレ」を埋める作業は、経営者一人では限界があります。現地の言語だけでなく、経営者の意図を組織に浸透させられる優秀なマネジメント人材がいれば、組織の安定感は劇的に変わります。
抱え込んで自滅するか、丸投げで崩壊するか。任せ方の罠
これも非常に多いケースです。
全部自分で抱え込んでパンクするか、逆に信頼という名の「完全放置」をしてしまうか。 前者は経営者自身が疲弊して倒れ、後者は現場のガバナンスが失われ、ブラックボックス化を招きます。
「任せる」とは、単に手放すことではありません。
判断の基準や背景を丁寧に共有した上で、委ねられる範囲を明確にする「仕組み」の構築が必要なのです。
感覚経営の限界。キャッシュフローから目を逸らすと詰む
売上、利益、そしてキャッシュフロー。
これらは経営の基礎ですが、海外では「なんとかなるだろう」という楽観的な感覚だけで進んでしまう人が意外と多いものです。
数字は冷静で、嘘をつきません。だからこそ、経営判断の唯一無二の軸になります。
ここが曖昧なまま進むと、問題に気づいた時には、文字通り「時既に遅し」となります。
感覚経営を脱し、現地のブラックボックス化を防ぐためには、数字を通じた「冷徹なガバナンス」が不可欠です。不正を防ぎ、自走する組織を作るための数字の扱い方はこちらにまとめています。
違和感を後回しにする。小さなズレが大きなトラブルになる前に
労務、営業、経理。
どの領域でも、初期に感じる小さな違和感があります。 「まあ大丈夫だろう」と流してしまいがちですが、その違和感は大抵、時間が経ってから大きなトラブルとなって戻ってきます。
違和感に気づいたその瞬間に向き合い、膿を出し切るかどうか。ここが経営の分岐点になります。
撤退ラインを決めない経営はギャンブルだ
事業を続けることは尊いですが、どこで見切るかという「撤退判断」も同じくらい重要です。
感情やプライドが邪魔をして、冷静な選択ができなくなるケースを多く見てきました。
どこまで損害が出たら幕を引くのか。その基準をあらかじめ決めていない経営は、ギャンブルと同じです。
こうした冷静な判断が最も難しくなるのが、予期せぬ外部要因で追い詰められた時です。
まとめ:失敗は能力ではなく「考え方のズレ」で決まる
ここまで書いてきた3〜7の項目は、正直に言えば、かつての私「Dexta」本人にそのまま当てはまることばかりです。(笑)
つまり、本来であれば私も間違いなく「うまくいかない側」にいた人間です。
資金繰りに走り回り、スタッフの離職に頭を抱え、自分の常識が通じない現実に何度も打ちのめされてきました。私が今こうして続けていられるのは、特別な能力があったからではありません。ただ、現場での失敗を直視し、泥臭く修正し続けることを辞めなかった、それだけのことだと思っています。
海外起業において、失敗は特別なものではありません。むしろ、誰もが通る道です。 ただ、その原因を振り返ると、能力不足よりも「考え方のズレ」であることがほとんどです。
結局のところ、失敗は能力や経験ではなく、“柔軟性や心構え”で決まるものだと感じています。
もしこれから挑戦される方や、今まさに現場で悩んでいる方がいれば、この記事が一つでも何かのヒントになれば幸いです。
経営者として決断し、責任を負い続けた日々の記録。こちらもあわせてどうぞ。
Dexta
失敗を直視し、泥臭く修正し続けた経営の日々に、少しだけ静かな時間を。 ▶ こころを整える、静寂の鏡
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