昇進を打診したら、困った顔で「今のままでいい」と言われたことも——
東南アジアで経営していると、これは珍しい話ではありません。責任が増える、同僚との関係が変わる、嫉妬されるのが怖い。日本とは根本から違う「昇進観」と、どう向き合えばいいのか。
この記事では、現地スタッフの本音と、昇進を前提としない組織設計のコツをお伝えします。
こんにちは、Dextaです。
「昇進=成功」ではない。彼らなりの生存戦略
日本では「昇進=成功」「出世=目標」としてごく自然に考えられますが、現地スタッフにとっては必ずしもそうではありません。
昇進は面倒、責任が増える、みんなとの関係が変わる——こんなネガティブなイメージを持つ人も多く、昇進したがらない人も現実にいました。
「使う側になりたくない」。仲間との関係を守る誠実な拒絶
実際に「昇進を拒否したい」と申し出た現地スタッフがいました。
使われる側より、使う側になりたくない、よく一緒に食事に行く仲の良い同僚との関係が変わるのが怖い——こんな本音を相談されたこともあります。
加えて、昇進したことで同僚や同期から嫉妬や妬みを向けられることを心配し、それを避けたいという思いも正直に語ってくれました。
プレッシャーより確実な給料。彼らが昇進を避ける本音
昇進すれば実際に給料は上がるものの、現地での多くの人は「毎月確実に給料が支払われること」をより重視しています。
昇進によって責任や負担が増えることの方が心理的ハードルになり、たとえ給料が上がっても、それ以上のプレッシャーを避けたいという本音を感じる場面が多くありました。
家族を養うこと、自分の生活を安定させることが何より優先される現地のライフスタイルも強く感じます。
給料日翌日の「突然退職」を防ぐには。現地の金銭感覚と、定着率を高める3つの工夫。
上に立つことへの心理的抵抗。リーダー像のギャップ
責任を持たせようとしても、責任=負担と考えられることが多く、まるで体育会の上下関係のように、上に立つことが心理的に大きなプレッシャーになる難しさを感じます。
上に立つ人は強く指導しなければいけない、チーム全体を引っ張らなければいけない、といった“リーダー像”を過度に求められるイメージがあり、その役割を重荷に感じてしまう現地スタッフも少なくありません。
同僚との関係を優先させたがる人が多く、みんなの中に平等に混ざることが最適と考えられているようです。
現地スタッフとの信頼関係の築き方については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
昇進に頼らない組織デザイン。外部人材活用という選択肢
これは私個人の考えになってしまうかもしれませんが、我々のような小規模な会社は昇進させられるようなポジションもそう多くないため、昇進を敬遠する風土は、めんどくさくなくて助かっている部分もあります(笑)。
一方で、昇進や配置換えが極端に少ないことは社内ムードを停滞させる要因にもなるので、モチベーションを保つための施策や新人の積極的採用は、ある程度必要だと感じています。
昇進が限られてしまう会社だからこそ、“役割の分担”と“人事評価”で人を動かす工夫が欠かせません。
昇進を望まないスタッフと深く向き合うには、言葉の壁を超えたコミュニケーション力が欠かせません。英語での対話の精度が上がるほど、スタッフの本音を引き出しやすくなります。海外経営者として、ビジネス英語を早期に鍛えておくことをお勧めします。
まとめ:昇進観の違いを尊重しながら、組織の士気を保つ
昇進=幸せという考え方は、あくまで日本的な価値観です。現地では、昇進にメリットを感じない、責任を引き受けたくない、仲間との関係を壊したくないと考える人がいるのも自然なことだと今は受け止めています。
昇進を拒むという選択肢も尊重しながら、その中でもどうしたら現場の士気を保ち、組織の成長につなげられるのか。
現地の価値観をしっかり尊重した上で、自社にとって自然で続けやすいルールを少しずつ、でも着実に育てていくことが、私たちのような小さな会社には何より大事なのかもしれません。
こうして私は、今日もまた現場でひとつひとつ「我が社らしさ」を試行錯誤しながら積み重ねています。
昇進を望まないスタッフの欠勤対策については、こちらもあわせてどうぞ。
Dexta
昇進を望まない、責任を避ける——それでも彼らと向き合い続ける経営の日々に、少しだけ静かな時間を。 ▶ こころを整える、静寂の鏡
書籍紹介:世界基準の「部下の育て方」——「モチベーション」から「エンゲージメント」へ(田口力著)
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