社内マフィア化と内部不正——信頼が裏切りに変わる瞬間

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こんにちは、Dextaです。

海外で会社を経営していると、外からのトラブル以上に厄介なのが「内側」で起こる問題です。特に、現地スタッフの中で力を持つ管理職が“社内マフィア化”すると、その影響は経営全体に及びます。今回は、

実際に体験した内部不正の実例を交えながら、東南アジアでの組織運営に潜むリスクと教訓を共有します。


1.「社内マフィア化」はどの職場にも起こりうる

現地スタッフの中でも、長年勤めている人や立場の強いマネージャーが“社内マフィア化”することがあります。

彼らは新しく入ってきた社員を軽視したり、上司の指示を自分の都合で捻じ曲げたりします。最初は些細な不満の共有から始まり、次第に「自分たちの派閥」を形成していきます。放置すると、職場の空気も変わり、誰も正しい意見を言えなくなる危険な状態に陥ります。


2.不正の裏には「癒着」と「影響力」がある

私の経験では、仕入れ担当のマネージャーが取引業者と癒着し、キックバックを受け取っていたケースがありました。

このマネージャーは私の前任者からの信頼も厚かったのですが、私自身は当初より少し怪しいと感じることがありました。彼は社内で信頼を得ていただけでなく、地域社会でも“まとめ役”的な立場にあり、地元住民との関係も深かった。そのため、退職へと持っていく際には、地域との軋轢を生まないよう慎重な対応が求められました。

しかも彼の生活ぶりは、明らかに給与所得では説明がつかないほど派手で、そこからも不正の可能性を疑わざるを得ませんでした。彼のような人物は、影響力と人脈を武器に社内外に“力”を持つため、処分一つ取るにも神経を使います。


3.内部告発がもたらした決定的な転機

不正を内部告発してくれたのは、長年一緒に働いてきた経理マネージャーと人事マネージャーでした。おそらく、彼らの中には長年の鬱積した不満もあったのだと思います。

私が赴任してしばらく経った頃のことだったので、私の人となりを見て「この人なら不正を正してくれるかもしれない」と感じてくれた部分もあったのかもしれません。彼らの勇気ある行動がなければ、証拠をつかむことは難しかったでしょう。

最終的には弁護士や社内協力者と連携し、業者とのやり取りを証拠として押さえ、ようやく退職に持ち込むことができました。


4.不正発覚後に考えた「安全と備え」

不正を起こしたマネージャーの退職が決まった後も、私の頭から離れなかったのは「報復」のリスクでした。彼は地域社会でも顔が広く、影響力があったため、万が一に備えて自宅マンションの警備を強化するなど、身辺の安全対策も徹底しました。

経営者としての立場は孤独で、こうした緊張感が日常の一部になることも少なくありません。


5.文化的背景と「報告できる空気」の重要性

東南アジアでは、人間関係や仲間意識を何よりも重んじる文化があります。だからこそ、内部不正が起きても、同僚や部下がそれを報告しにくい環境になりがちです。

「チームを裏切ることになる」と考える人が多く、結果として問題が表面化しにくい。今回の件も、勇気を出して声を上げてくれた社員がいたからこそ、事態の全容が明らかになりました。

もし誰も口を開かなければ、会社の根幹が蝕まれていたかもしれません。


6.裏切りから学んだ信頼と統制のバランス——組織を守るために

内部不正は、一度発覚すると信頼関係を根底から揺るがします。しかし、そこから学ぶことが多いのも事実です。

感情に流されず、冷静に証拠を集め、粛々と処理する。再発防止の仕組みを作り、組織として成長の糧に変えていく。

「信頼」と「統制」のバランスをどう取るか——これは海外経営において永遠のテーマかもしれません。


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