給料日の翌朝、スタッフが突然来なくなる——東南アジアで経営していると、これは決して珍しい話ではありません。
数百円の差で転職し、前借りを当然のように相談してくる。日本とは根本から違う金銭感覚と、どう向き合えばいいのか。
この記事では、私が現地で経験してきた給与感覚のギャップと、定着率を高めるための3つの工夫をお伝えします。
こんにちは、Dextaです。
給料日翌日に消える。なぜ彼らはそう動くのか
給料日を過ぎた翌日に、スタッフがいきなり辞める——。
これは東南アジアの多くの現地企業で起きている、ある種の“あるある”かもしれません。
もちろん全員ではありませんが、「一度お金を手にしたら、次はより条件の良い職場に移る」という価値観は、想像以上に根強く存在します。
あるときは、入社して3か月も経っていない新人スタッフが、給料を受け取った翌朝に出社せず、そのまま音信不通に。確認してみると、別の会社に“ほんのわずかだけ給料が高い”という理由で転職していたこともありました。
高い離職率を前提とした組織づくりと、誰が抜けても回る『仕組み化』の要諦はこちら。
数百円の差で転職する。それが彼らのリアル
以前の記事でも少し触れましたが、東南アジアの労働市場ではわずか数千円、時には数百円の差でも転職することがあります。それは職位や仕事内容、会社の安定性に関係なく、「目先の収入」が最優先される傾向があるからです。
これは「合理的に判断している」のではなく、「今月の生活が成り立つかどうか」が彼らにとって最重要だから。
長期的なキャリアよりも、目の前の現金が生活を左右するリアルがそこにあります。
このような『条件最優先』の層をマネジメントし、組織として機能させるには、彼らとは一線を画す高い職業倫理とキャリア観を持った『ハイクラスな現地幹部』の存在が不可欠です。目先の給与に惑わされず、経営理念を現場の言葉に翻訳して伝えられる右腕がいれば、離職の波に経営者が直接翻弄されることはなくなります。
「お金を貸して」への向き合い方。規律と柔軟性の境界線
入社して間もないスタッフから「お金を貸して欲しい」「来月分を前借りしたい」という相談を受けることもよくあります。はじめの頃は驚きましたが、これも東南アジアでは特に珍しいことではありません。(笑)
とはいえ、私は原則として前借や貸し付けには応じないスタンスを取っています。信用は時間と行動で築くもの。
勤続年数が長く、信頼できるスタッフにだけ、例外的に相談に応じるようにしています。
半日で帰る新人。教育コストを無駄にしない見極め術
これは現場ワーカーの“あるある”かもしれませんが、「思っていたより作業が大変だった」という理由だけで、お昼を待たずに帰ってしまう新人もいます。
しかも、そのまま退職というケースも珍しくありません。(もちろん、半日分の給料を請求されることは滅多にありませんし、あったとしても支払うことはまずありません・・・笑)
根本には「大変なことは続けられない」「向いていないと思ったらすぐ辞める」という文化的な柔軟さがありますが、経営する側としてはなかなか悩ましい問題です。
待遇交渉は、信頼を試される場面でもある
給与や前借の話は、単なる“待遇交渉”ではなく、スタッフとの信頼関係を試されている場面でもあります。
給与をめぐる問題にどのように対応するかで、「この会社はちゃんと向き合ってくれるのか」と見られているのです。
安易に応じると会社側が舐められる一方で、突き放しすぎるとスタッフの心は離れていく——。
だからこそ、制度やルールを明確にしつつも、個々に応じた柔軟な対話が必要だと感じています。
現地スタッフと信頼関係を築くために、私が10年の試行錯誤でたどり着いた3つの要諦。
まとめ:給料で釣らず、「居場所」を作る
給与額の差だけで人が辞める世界では、待遇改善だけでは人材定着は難しい。
本当に必要なのは、金額を超えた「関係性」や「成長実感」を生む職場作りなのかもしれません。
今の私たちの会社も、まだまだ試行錯誤の途中です。
これは、東南アジアで人を雇い、共に働く中で、私が何度も突きつけられてきた現実でもあります・・・ただ“給与で釣る”のではなく、「ここにいたい」と思ってもらえる組織を目指して、今日も一歩ずつ取り組んでいます。
金銭感覚の違いを補う右腕人材の育て方については、こちらもあわせてどうぞ。
Dexta
信頼を積み重ねながら、それでも人は去っていく。そんな経営の日々に、少しだけ静かな時間を。 ▶ こころを整える、静寂の鏡
書籍紹介:モチベーション3.0 ― 持続する「やる気!」をいかに引き出すか(ダニエル・ピンク著/大前 研一訳)
▶ 給与額の競争を脱し、「ここで働きたい」という内発的動機を育む
記事で書いた『待遇改善だけでは定着しない』という悩み。それは、金銭という外発的な報酬だけでは、人の心は繋ぎ止められないことを示しています。 では、どうすればスタッフの中に「自ら成長したい」「この会社に貢献したい」という火を灯せるのか。世界的名著である本書は、これからの時代の組織作りにおいて、給与を超えた価値をどう設計すべきかの明確な指針を与えてくれます。


コメント