出世したくない?——昇進を拒む現地スタッフの本音

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東南アジアで現地スタッフと一緒に働いていると、「昇進=目指すもの」ではないことに気づきます。
めったにあることではありませんが、昇進を拒否されることもあります。
責任を担うことや面倒ごとを増やしたくない、同僚からの嫉妬や妬みを避けたい——そんな理由から昇進を敬遠する現地スタッフの本音を聞いたとき、私は少し驚きました。


1.昇進はモチベーションにならない?

日本では「昇進=成功」「出世=目標」としてごく自然に考えられますが、現地スタッフにとっては必ずしもそうではありません。

昇進は面倒、責任が増える、みんなとの関係が変わる——こんなネガティブなイメージを持つ人も多く、昇進したがらない人も現実にいました。


2.昇進拒否もよくある話

実際に「昇進を拒否したい」と申し出た現地スタッフがいました。
使われる側より、使う側になりたくない、よく一緒に食事に行く仲の良い同僚との関係が変わるのが怖い——こんな本音を相談されたこともあります。
加えて、昇進したことで同僚や同期から嫉妬や妬みを向けられることを心配し、それを避けたいという思いも正直に語ってくれました。


3.昇進より金銭的安定を重視

昇進すれば実際に給料は上がるものの、現地での多くの人は「毎月確実に給料が支払われること」をより重視しています。
昇進によって責任や負担が増えることの方が心理的ハードルになり、たとえ給料が上がっても、それ以上のプレッシャーを避けたいという本音を感じる場面が多くありました。

家族を養うこと、自分の生活を安定させることが何より優先される現地のライフスタイルも強く感じます。


4.責任を持たせることの難しさ

責任を持たせようとしても、責任=負担と考えられることが多く、まるで体育会の上下関係のように、上に立つことが心理的に大きなプレッシャーになる難しさを感じます。
上に立つ人は強く指導しなければいけない、チーム全体を引っ張らなければいけない、といった“リーダー像”を過度に求められるイメージがあり、その役割を重荷に感じてしまう現地スタッフも少なくありません。

同僚との関係を優先させたがる人が多く、みんなの中に平等に混ざることが最適と考えられているようです。


5.集団の広げ方を考える

これは私個人の考えになってしまうかもしれませんが、我々のような小規模な会社は昇進させられるようなポジションもそう多くないため、昇進を敬遠する風土は、めんどくさくなくて助かっている部分もあります(笑)。

一方で、昇進や配置換えが極端に少ないことは社内ムードを停滞させる要因にもなるので、モチベーションを保つための施策や新人の積極的採用は、ある程度必要だと感じています。


6.現地の価値観を尊重しながら、自社に合ったルールを育て続ける

昇進=幸せという考え方は、あくまで日本的な価値観です。現地では、昇進にメリットを感じない、責任を引き受けたくない、仲間との関係を壊したくないと考える人がいるのも自然なことだと今は受け止めています。

昇進を拒むという選択肢も尊重しながら、その中でもどうしたら現場の士気を保ち、組織の成長につなげられるのか。

現地の価値観をしっかり尊重した上で、自社にとって自然で続けやすいルールを少しずつ、でも着実に育てていくことが、私たちのような小さな会社には何より大事なのかもしれません。

こうして私は、今日もまた現場でひとつひとつ「我が社らしさ」を試行錯誤しながら積み重ねています。


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