東南アジアで会社を経営していて驚かされるのが、現地スタッフの“給与に対する感覚”の違いです。
お金に対する価値観が根本から違うと、マネジメントや人材定着の戦略も大きく変わってきます。
今回は、私が実際に現地で経験した“給与感覚のギャップ”と、その対応策についてお話しします。
1.給料日翌日の“退職ラッシュ”
給料日を過ぎた翌日に、スタッフがいきなり辞める——。
これは東南アジアの多くの現地企業で起きている、ある種の“あるある”かもしれません。
もちろん全員ではありませんが、「一度お金を手にしたら、次はより条件の良い職場に移る」という価値観は、想像以上に根強く存在します。
あるときは、入社して3か月も経っていない新人スタッフが、給料を受け取った翌朝に出社せず、そのまま音信不通に。
確認してみると、別の会社に“ほんのわずかだけ給料が高い”という理由で転職していたこともありました。
2.数百円の差でも辞めるという現実
以前の記事でも少し触れましたが、東南アジアの労働市場ではわずか数千円、時には数百円の差でも転職することがあります。
それは職位や仕事内容、会社の安定性に関係なく、「目先の収入」が最優先される傾向があるからです。
これは「合理的に判断している」のではなく、「今月の生活が成り立つかどうか」が彼らにとって最重要だから。
長期的なキャリアよりも、目の前の現金が生活を左右するリアルがそこにあります。
3.前借や借金の相談も日常茶飯事
入社して間もないスタッフから「お金を貸して欲しい」「来月分を前借りしたい」という相談を受けることもよくあります。
はじめの頃は驚きましたが、これも東南アジアでは特に珍しいことではありません。
とはいえ、私は原則として前借や貸し付けには応じないスタンスを取っています。
信用は時間と行動で築くもの。勤続年数が長く、信頼できるスタッフにだけ、例外的に相談に応じるようにしています。
4.余談:お昼前に辞める新人も?
これは現場ワーカーの“あるある”かもしれませんが、「思っていたより作業が大変だった」という理由だけで、お昼を待たずに帰ってしまう新人もいます。
しかも、そのまま退職というケースも珍しくありません。(もちろん、半日分の給料を請求されることは滅多にありませんし、あったとしても支払うことはまずありません・・・笑)
根本には「大変なことは続けられない」「向いていないと思ったらすぐ辞める」という文化的な柔軟さがありますが、経営する側としてはなかなか悩ましい問題です。
6.お金の話は、信頼関係の鏡でもある
給与や前借の話は、単なる“待遇交渉”ではなく、スタッフとの信頼関係を試されている場面でもあります。
給与をめぐる問題にどのように対応するかで、「この会社はちゃんと向き合ってくれるのか」と見られているのです。
安易に応じると会社側が舐められる一方で、突き放しすぎるとスタッフの心は離れていく——。
だからこそ、制度やルールを明確にしつつも、個々に応じた柔軟な対話が必要だと感じています。
7.“金額”ではなく“関係性”でつなぐ仕組みを
給与額の差だけで人が辞める世界では、待遇改善だけでは人材定着は難しい。
本当に必要なのは、**金額を超えた「関係性」や「成長実感」**を生む職場作りなのかもしれません。
今の私たちの会社も、まだまだ試行錯誤の途中です。
でも、ただ“給与で釣る”のではなく、「ここにいたい」と思ってもらえる組織を目指して、今日も一歩ずつ取り組んでいます。
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