東南アジアで現地スタッフと働いていると、日常業務以上に悩ましいのが“会議”です。
特に困るのが、「伝えたつもりだったのに、全然伝わってなかった」というケース。
これは単に私の語学力だけの問題ではなく、“会議文化そのものの違い”に根ざしているのだと、年々感じるようになってきました。
1.Yesは本当に“Yes”?
現地スタッフとの会議で「わかった?」と聞くと、たいていは黙ってうなずきます。
でも実際には、全然わかっていなかった——そんなことが何度もありました。
これは彼らが「No」と言いにくい文化で育ってきたことが大きいのかもしれません。
特に外国人や上司の前では、場の空気を悪くしないよう“とりあえず肯定する”のが優しさ、という価値観があるように感じます。
2.質問しても返ってこない沈黙の会議
「ここまでで質問ある?」と聞いても、ほとんどの場合は沈黙。
特に私やマネージャークラスが発言した後ほど、誰一人発言しません。
これは、発言する習慣が育っていないことが大きいです。
大人数の前で話すことに慣れておらず、「変なことを言って笑われたくない」「間違っていたら恥ずかしい」と感じるようです。
3.“報連相”が根付かない理由
日本では当たり前の「報告・連絡・相談」。
でも、東南アジアではまだまだ浸透していないように思えます。
問題が起きても「上司が忙しそうだから」「言っていいか判断できない」と黙ってしまう。
縦方向の報連相は比較的機能しても、横の連携になると一気に弱くなる印象です。
本来であれば横の連携をすることでスムーズになる筈の業務も、多くの人が目先のことにとらわれ、「自分のことだけやっていればいい」という感覚を持っているのも一因です。
4.伝えるための“仕掛け”が必要
このような背景を踏まえ、私は会議のときにはなるべくホワイトボードを使い、図解して説明するようにしています。
言葉だけでは伝わらないからこそ、視覚的なサポートが重要と考えています。
それでもミスコミュニケーションはゼロにはなりません。
だからこそ、どんなに忙しくても、毎日の朝ミーティングは必須としています。
スタッフと顔を合わせ、「本当に理解しているか?」を見極めるための時間でもあります。
とはいえ、それでもやっぱり行き違いは起きるのが東南アジア“あるある”です。(笑)
5.伝えるには、安心と信頼が必要
会議や報連相がうまくいくかどうかは、単に仕組みの問題ではありません。
「この場だったら本音を言っても大丈夫」と思える関係性があるかどうかや、ある程度自由な発言を許容し合う雰囲気づくりにも気を配る必要があるのかもしれません。
だからこそ、現地のスタッフと信頼を築くことが、結局は伝達の質を左右するのだと思います。
時間はかかっても、安心して発言できる雰囲気づくりこそが、伝える文化を育てる第一歩なのです。
6.会議は“理解の確認”ではなく“文化の構築”
東南アジアでの会議は、「説明する場」ではなく、少し大袈裟かもしれませんが「それぞれの文化を共有する場」といえるのかもしれません。
Yesと言われても、それが本当にYesかを疑い、確認事項の繰り返しや図解を駆使して相手の理解度を確かめる。
その積み重ねが、少しずつ“伝わる文化”を作っていくのだと思います。
簡単ではありませんが、これもまた異文化経営の醍醐味のひとつです。
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