時間は守らないし、進捗も遅い——東南アジアで仕事のスピードに悩んだ話

海外ビジネス・生活のリアル

「15日に納品お願いします」——そう伝えても、その日に届くことはほとんどありません。

しかも「遅れてますよ」と言っても、現地の業者は「大丈夫大丈夫」と笑って返してくる。

タイでは「Mai pen rai」、フィリピンでは「No problem」。インドネシアなら「Tidak apa-apa」。

一見フレンドリーな言葉の裏に、日本とはまったく違う“時間感覚”が横たわっています。

1.納期が守られないのが“前提”の世界

何度も確認し、発注書にも納期を記載していても、期日に届くことのほうが少ない。
納期=“理想的な希望日”という認識が現地には根強く、「その日を過ぎてから用意を始める」ようなケースも珍しくありません。

当初は「しっかり伝えれば分かってもらえる」と思っていましたが、文化や時間に対する価値観がそもそも違うことに気づき、今では諦めに近い感覚を抱くようになりました。

2.「大丈夫」と言われても、何一つ大丈夫じゃない

インドネシアでよく聞くのが「Tidak apa-apa」。
これは「大丈夫」「気にしないで」という意味で、現地では日常的な言い回しです。
タイなら「Mai pen rai」、フィリピンでは「No problem」といった表現もあります。

でも、こちらとしては全く笑えない。「納期が守られないと困る」と伝えても、深刻さは伝わらない。

結果的に、納期遅れが続くとこちらの信用まで落ちてしまい、実際に日本の取引先から「御社も現地企業になっちゃった?」と嫌味を言われたことすらあります。(笑)

3.“遅れること前提”でスケジュールを設計する

現地での調達や製造が時間通りに進まないことは、ある意味“当然”として扱わなければなりません。
そのため、私は製造計画や販売計画を立てる際、「遅れること前提」で設計するようになりました。

どうしても間に合わせなければいけない案件では、リスク回避のために余剰在庫を先に抱えておくこともあります。
効率よりも「確実さ」を優先しないと、現地ではビジネスが回らなくなることすらあるのです。

4.調達と販売の“スピード差”に悩まされる

特に悩ましいのが、調達先が東南アジア、販売先が海外(日本や欧米)の場合。
現地の納期感覚と、輸出先の期待値が完全にズレており、そのギャップに苦しめられます。

書類の準備、品質チェック、出荷準備……日本では「前倒し」が当たり前のように求められますが、現地では「今日言われたことを、明日やる」くらいの感覚が主流です。

5.“文化を責めず、現実に備える”という考え方

この問題に対して、「現地が悪い」と責めても何も変わりません。
大切なのは、文化の違いを理解したうえで、それを前提とした仕事の準備と設計を行うこと。

日本式の感覚をそのまま持ち込めば、必ずどこかで無理が生じます。
スピードのギャップを「どう埋めるか」ではなく、「どう織り込むか」。
それが、東南アジアでのビジネスにおいて必要な視点なのだと、私は感じています。

6.“ズレ”を受け入れ、仕組みで補う

東南アジアでビジネスをする以上、時間感覚の違いは避けられないものです。
文化の違いを否定せず、「起こる前提」で計画を立てることが、安定した経営への第一歩になります。

私は今も試行錯誤の連続ですが、これが「現実」であり、「前提」であると捉えたとき、経営の視界が少しクリアになったような気がしました。

Dexta


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