「現地化」の落とし穴——東南アジアで全部を任せて失敗した話

海外ビジネス・生活のリアル

こんにちは、Dextaです。

右腕となるマネージャーも育ち、任せ方のコツも少しずつ掴めてきた。そんな実感が芽生えてきた、起業から数年後のことでした。

「製造現場を任せられれば、私にも余裕ができるしもっとスムーズに会社が回るはず」

そんな期待から、私はある決断をします。今回は、その“任せすぎた結果”に起きた、苦い失敗談を共有したいと思います。


1.やっと出会えた、頼れそうな人材

そのスタッフは、製造現場の経験が豊富で、しかも気が利く。ちょっとした問題にも自発的に動いてくれて、言われる前に気づいて行動を起こしてくれるタイプ。

「ようやく現場を任せられそうな人材に出会えたかもしれない」

そう思えたのは、起業して数年が経った頃でした。日々のノルマもきちんと達成しており、現場の混乱も見られない。

気づけば私は、いつの間にか彼に多くを任せるようになっていました。


2.全面委任。そして始まった品質クレーム

ノルマ達成が続く中、私は徐々に「現場はもう任せて大丈夫だろう」と考えるように。

そして最終的には、現場全体のオペレーションをほぼ彼に一任するようになっていました。

それが、苦悩の始まりでした。

任せてからしばらくした後、取引先から品質クレームが相次ぐようになったのです。

  • 製品の仕上がりにバラつきがある
  • 異物混入の報告
  • 基準外の製品が混ざっていた

最初はたまたまかと思っていましたが、頻度と内容からして“異常”でした。


3.再介入で知った、見たくなかった現実

重い腰を上げて再び現場に入ってみると、信じられない光景が広がっていました。

ノルマをこなすために、品質チェックの工程がほぼ形骸化していたのです。

  • 本来3段階で確認すべきチェックを1回で済ませる
  • 記録も後付け、もしくは省略
  • 不良品率が高くても、出荷を止めない

さらに、備品の過剰発注とその横流し、見積の上乗せによるキックバックまで発覚。

あれほど信頼していたスタッフを、最終的には解雇せざるを得ませんでした。


4.任せることは、放棄することではなかった

「気が利くから大丈夫」「ノルマを守ってるなら問題ない」

そうやって、私は“任せること”と“自分が楽すること”を履き違えていたのだと思います。

彼のことを疑う場面が無かった訳ではない。でも、もっと早く気づいて、一緒に現場を見て歩きながら、段階的に任せることもできたはずなんです。


5.苦い経験が、今の習慣を作った

この一件以来、私はいかに右腕が育っても、現場には自分の足で立つことを忘れないようにしています。

  • 日に数回は現場の空気を直接感じる
  • スタッフの目つき・声色から「違和感」を拾う
  • 現場の些細な変化や温度を、数字以外で確認する

「信頼してるけど、任せきりにはしない」
そのバランスを模索する日々です。

現地化は確かに大切なテーマですが、それは決して「丸投げ」することではありません。スタッフと関わる自分自身の姿勢そのものが会社を守るのだと、今では実感しています。

Dexta

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